【イベントレポート】11/14(木)完成披露試写会

11月14日(木)渋谷のユーロライブで『火の華』の完成披露試写会を行いました。上映後には、主人公の島田東介を演じた山本一賢さん、小島央大監督が登壇し、QA付きのトークイベントを開催。イベントの様子をお届けします。

この日がワールドプレミアとなった本作。小島監督は「撮影するときも編集するときも、映画自体をひとつの生きもののような感じで捉えているんです。こいつが何を欲しがっているのか、どこへ向かっているのか、映画と会話をするように作っていく感覚で。今日でようやく作品がひとり立ちし、今は巣立ちの瞬間にいるような気持ちです」とプレミア上映を終えたばかりの心境を吐露。

また、本作の経緯については「まずモチーフとしてやりたいなと思ったのが、花火職人の物語でした。花火、火薬、日本における文化的な意味合いを知っていく中で、新潟県長岡の花火を見た時に、花火が持っているテーマ性が浮かび上がってきて、ようやく“なぜこれを撮ろうと思ったのか”を自問自答する形になって。もともと弔いという意味合いを持っている花火が、どのような物語になるだろう?と考えました」と述懐。

そうして、命を奪う「暴力性」を持つ鉄砲と弾丸。死者への慰霊や鎮魂を意味し、「平和性」を表す花火。相反する“火薬”をモチーフにすることに行き着いた監督。ニューヨーク育ちの監督にとって、テレビではPTSDを抱えた兵士のニュースが頻繁に報じられるなど、PTSDの問題は常に身近にあったそう。「花火で救われる人もいれば、PTSDを発症してしまう原因にもなり得るという矛盾をはらんだところに着目しました」と本作の成り立ちを明かしました。

2021年に公開され、新藤兼人賞を受賞するなど高く評価された『JOINT』に続く2度目のタッグで、共同企画・脚本にも名を連ねる監督と山本さん。共同での作劇について、監督は「山本さんが島田東介目線の主観的な感情や記憶を書いて、僕がそこに客観性を盛り込んでいきました」。一方、山本さんは「最初は現場仕事から始まって、そこから銃を取り出す……って、また『JOINT』と同じ展開じゃねえか?と思った」と会場を笑わせつつ、「人生の壁と向き合っているところは、前作も今作も同じですね」とコメント。また元自衛官で、新潟で花火師となる役を演じるにあたり、実際に小千谷の花火師に花火作りを学んだという山本さん。「取り扱いが怖かったんですよ。練習もいっぱいして、多少上手くなっていたんですが、よく考えたら、島田は上手になってはダメな役。なんで練習しちゃったんだろうね?(笑)」と茶目っ気たっぷりに振り返りました。

また、火だけでなく、花もモチーフになっている本作。中でも、島田を表す花として夏椿が登場しますが、これは山本さんが出したアイデアなのだとか。「花火って、儚いからこそ美しいと言われていますよね。映画も人生もそう。そんな儚さを象徴する花として、夏椿に出会いました」と明かす山本さんに対して、監督は「山本さんってロマンチストなんですよね。そんな山本さん自身の価値観がこの映画にフィットしているし、そのおかげで唯一無二の作品になったと思います」と自信をのぞかせました。

そんな2人に加え、本作プロデューサー兼中国マフィアのボス役で出演もしているキム・チャンバさんは『JOINT』からの盟友。3人の関係性について、監督は「まっすぐに意見を言い合える同志。支え合っている三角関係なのかなと思います」と説明。一方、山本さんは、「央大は『才能がすごい』と言われているんだけど、結構泥くさいんですよ。努力家ですし。インテリだけどストリートなところも好きだなぁって。ニューヨーク育ちで東大の建築学科卒業と聞くと、ちょっとイラッとしたりもするけど(笑)“良い映画を作ろう”という目的が一緒だから仲良くできる」と、監督の魅力を明かしました。それを聞いていた監督は「努力家って言われるのは嬉しいですね」とはにかみながら、「『火の華』は、若いスタッフたちで作った映画。 “後世にずっと残る映画を作ろう!”と、みんなの情熱と才能が結集した映画です」と説明。

その後の観客からのQ&Aでは、鑑賞直後の余韻冷めやらぬ熱のこもった質問が数多く飛び交いました。劇中で英語台詞に日本語字幕がついていないシーンがあり、その意図を問われた監督は「世の中が平和になってほしいとか、愛をもって人間と接しようとか、ある種、綺麗ごとだと思われがちなことを、あえてちゃんと声に出して言えるような世の中になってほしい」話すと、続けて「そんなセリフを誰に託したいかと考えました。そして、字幕がつくと、どうしても(翻訳者の)“解釈”がついてきてしまう。英語がわからなくても何か伝わるものがあるんじゃないかなと思い、字幕なしで編集しました」と説明。

また、X(旧Twitter)に“島田東介”というアカウントが存在するのを指摘された山本さんは「恥ずかしいっすね。“島田がSNSをやっていたらこんなことを書くだろう”という役作りの一環として、独断でやっていた。その時の島田の思いを書き連ねていました」と述懐。これは監督も知らなかったようで、「よく見つけましたね」と驚いていました。

2024年も残りわずか。最後に監督は「今年最後の映画と花火は、ぜひスクリーンで観る『火の華』で締め括ってほしいです」と言葉を送り、イベントは幕を閉じました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA